こんにちは、悠です。
突然ですが、
数年前にとあるご縁で
「龍雲庵」という高級懐石料理のお店に
招待されたことがあります。
そこで僕は、一流のおもてなしを体験しました。
その時のおもてなしが
子どもの食の問題の解決に役立つものだったので、お伝えしたいと思います。
「子どもに食べムラがあってイライラする」
「子どもが食わず嫌いしてむかつく」
そんなママさんには参考になるかなと。
誕生日プレゼントは「鯛の骨」
龍雲庵に行くことになったのは、
僕の19歳の誕生日。
大学生当時、
下宿させてもらっていた叔母から
「せっかくの誕生日だし、いいところに連れて行ってあげる」
と誘われたのがきっかけでした。
お店の見た目は
こじんまりした老舗。
分厚い木の看板に彫られた「龍雲庵」の文字と、歴史を感じる深緑ののれん。
決して派手なたたずまいではないですが
かつて和食の世界で日本一と呼ばれた料亭の
料理長が独立して開いたお店。
知る人ぞ知る「ツウの店」として
美食家が足しげく通う名店。
そんなレベルの高い料亭に行くのは初めてだったので、正直気後れしていました。
学生の僕が、こんな立派なお店に
「本当に入ってもいいんだろうか…」
「場違いじゃないだろうか…」
とためらいながら、
叔母の後について、恐るおそるお店の中へ。
フロントで予約の確認をすると、
「お待ちしておりました。◯◯様ですね。」
「上着をお預かりしますね」
「どうぞおあがり下さい」
と丁寧な対応で。
「いつも友だちと行くファミレスとは全然違う…!」
「フロントでこんな丁寧なら、中ではどんなおもてなしが待ってるんだろう…!」
と期待が高まっていきました。
そして、座敷に案内されると、
そこには高級感あふれる和室が広がっていました。
掛け軸や大きな壺が飾られていて、
座布団も高貴な朱色。
「なんか緊張するな…」
「でも、どんな料理が出てくるか楽しみだなぁ」
と、自分の場違い感に戸惑いながらも
お店の雰囲気や丁寧な対応に
料理への期待が抑えきれませんでした。
そしてしばらくすると、
お待ちかねの料理が。
懐石料理のお店なので、
コース形式で次々に運ばれてくる料理たち。
季節の食材をふんだんに使った先付は、
鮮やかなお皿に秋をイメージした色味の
料理の盛り合わせ。
シンプルな白い皿に盛り付けられたお刺身は
鮮度抜群で、まるで直前まで泳いでいたかのような光沢と歯ごたえ。
柿の葉で包み焼きにされ
さわやかな香りと
とろけるような舌触りの牛肉。
「これが一流の技か…!」
と思わず言葉を失いました。
さらに驚いたのは、
仲居さんの気配りの数々で。
お客さんが気持ちよく食事を楽しむ
ために、あらゆることをしていたんです。
料理を持ってくるタイミングは
ちょうどお客さんの会話の切れ目だったり。
料理を出す時の皿の配置や角度も
料理の美味しさが一目で伝わるように考えられていて、しかも食べやすい。
飲み物が無くなっていたら、
「次は何を飲みますか?」
と聞いてくれる。
「お客さんが自分のペースで気持ちよく食事を楽しむこと」
を、こんなに真剣に追求してくれるお店に
今まで行ったことはありませんでした。
「こんな美味しい料理を食べられるなんて幸せだな…」
「この時間がずっと続けばいいのにな…」
と考えていたら、
いつの間にか最後の料理が入ったどんぶりが目の前に。
「最後はどんな料理かな…!」
とワクワクしながら蓋を開けると、
そこには鯛1匹丸ごと使った「鯛めし」が入っていました。
最後の料理ということで、
料理長も部屋まで来てくれていて。
「この度はお誕生日おめでとうございます」
「せっかくの誕生日ということで、めでたい食材として鯛を使ってみました」
と挨拶。
さらに、
「美味しく炊き上がってますので、
これから鯛をほぐしていきますね」
と料理長が仕上げをしてくれることに。
鯛がほぐされていく様に
ワクワクが止まりませんでした。
そして僕が
「もうすぐできるかな?」
と思った矢先に突然、
「おぉ!あったあった!」
と興奮する料理長の声が。
「何があったんですか?」
と僕が聞きに行くと、
「いいものだよ。君にプレゼントしよう。」
と料理長が魚の骨を手渡してくれたんです。
「これは『鯛の鯛』と言ってね。
めでたい食材の鯛の中にある、鯛の形をした骨なんだ。
だから、2重でおめでたいってわけさ」
「大きな鯛じゃないとこんなに綺麗な形にはならないから、君は運がいいね」
僕は料理長の言葉を聞いて
「僕のために、サプライズまでしてくれるなんて…!」
と、半分泣きそうになるくらい嬉しい気持ちでいっぱいでした。
まだ学生の、イチお客さんに
料理長がわざわざ出向いて
サプライズまでしてくれる。
それに、鯛の骨を通して
食の奥深さも教えてくれた。
お客さんに気持ちよく食事を楽しんでもらう
その気持ちが伝わってきたおもてなし体験でした。
食べる意欲の土台は「環境」
僕がこの話から言いたいのは、
【居心地のいい環境は、食べる意欲の土台である】
ということです。
僕は料亭にいる間、
自分のペースで
美味しい料理を十分に味わうことができました。
仲居さんの気配りや料理長の心意気のおかげで
僕は食事を楽しむことに集中できたんです。
でも、もし料亭で
早く食べたいのに、
料理の説明をくどくど聞かされて退屈な思いをしたり
好きに食べたいのに、食べる順番を細かく指定されたり
ゆっくり味わいたいのに
「もうお皿を下げたいのかな
残ってるけど急いで食べないと!汗」
と急かされる雰囲気や
「高級料理の味は、しょせん学生には分からないだろう」
と雑な対応をされる
そういう不快に思う要素が多かったら
僕は気持ちよく食事をすることはできなかったと思います。
どれだけ料理が美味しかったとしても、
「せっかくいい料理だったのに、もっとしっかり味わいたかったな…」
「なんか疲れたな…」
と感じていたことでしょう。
そしてこれは
家庭でも同じことが言えます。
子どもが気持ちよく食事ができる環境がなかったら
子どもの食べる意欲は湧かなくなってしまうのです。
毎日のように
「残さず食べなさい!」
「早く食べて!」
「食べるの!?食べないの!?どっちかにして!」
「食べないならもう作らないから!」
と小言を言ってしまっていたり、
食卓で両親が喧嘩をしていたり、
子どもがひとりぼっちで食べていたり…
大人からしてみれば、
きっと無意識にやってることだと思います。
でも、そういったひとつひとつの「居心地の悪さ」が積み重なって
子どもの食べる意欲を奪っていってしまいます。
その結果
いつの間にか子どもの
食わず嫌いや食べムラにつながってしまうんです。
だからこそ、
子どもの食卓から
食べることのマイナスイメージを
取り払ってあげる必要があります。
何も高級料亭みたいなおもてなしは
必要ありません。
子どもをお客様扱いしましょう、というのも全然違います。
そうじゃなくて、
子どもにとって、居心地の悪い食卓になっていないか?
を意識して
毎日の小さなマイナスを
増やさないようにすれば良いんです。
食卓では楽しい話をする、
できるだけ笑顔でいる、
子どもと一緒に食事をする…
どれも「すごく難しい…」というものではないと思います。
少しの意識で
子どもの食の問題が解決に向かうので
ぜひやってみてくださいね。
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